「実家に帰るたびに、物が増えている気がする」「捨てようと言うと、親が不機嫌になる」——そんな悩みを抱えている方は、決して少なくありません。実はこうした状態には「ためこみ症」という名前があり、単なる性格の問題として片付けられないケースもあります。今回は、片付けられない親との向き合い方について、専門的な視点も交えて考えてみました。
「ためこみ症」という、知っておきたい考え方
物を捨てられず、部屋にどんどん物が増えていく状態は、「ためこみ症(ホーディング障害)」と呼ばれることがあります。これは強迫性障害の一種として位置づけられることもあり、「いつか使うかもしれない」という不安から、物を手放すことに強い苦痛を感じる状態です。単なる「だらしなさ」や「性格の問題」として片付けるのではなく、背景に心理的な要因がある可能性を知っておくことは、向き合い方を考えるうえで役立ちます。
また、急に部屋が散らかり始めた、冷蔵庫に腐ったものが入っている、といった変化が見られる場合、加齢に伴う認知機能の変化が関係していることもあると言われています。もちろん、これは必ずしも当てはまるわけではありません。気になる変化があれば、自己判断で決めつけず、後述する相談窓口に相談してみることをおすすめします。
「捨てて」がうまくいかない理由
正論をぶつけても、かえって意固地にさせてしまうことが多いのは、「捨てなよ」という言葉が、本人には「大切なものを否定された」というように受け取られてしまうからです。片付けは「論理」だけでなく、「感情」に強く結びついた作業だということを、まず理解しておくことが大切です。
直接的な説得より、間接的なアプローチ
「捨てて」と直接言うのではなく、少し遠回りな伝え方の方がうまくいくことがあります。例えば、「知人の親も、元気なうちに少しずつ物を減らしているらしい」というように、第三者の話として伝える方法です。自分ごととして押し付けられるより、他人の話として聞く方が、素直に受け止めやすくなることがあります。
また、部屋の写真を撮って本人に見てもらう、というのも一つの方法です。日常的に見慣れてしまっている光景も、写真という形で客観的に見ると、印象が変わることがあります。
「捨てる」ではなく「選ぶ」に言い換える
「捨てる」という言葉自体に抵抗を感じる方には、「これからも使うものを選ぼう」という前向きな言い方に変えてみるのも効果的です。「老前整理」「生前整理」という言葉も、本来「手放す」ことより「これからをどう生きるか」を選ぶ作業を指しています。この視点を共有できると、少しずつ気持ちが動くこともあります。
一人で抱え込まず、専門の相談窓口も知っておく
片付けが本人の力だけでは難しい状態まで進んでいる場合、家族だけで抱え込まず、専門機関に相談するという選択肢もあります。お住まいの地域の「地域包括支援センター」では、高齢者の生活に関する相談を幅広く受け付けており、片付けに関する悩みについても相談できることがあります。
物理的な片付けそのものは、専門の片付け業者や遺品整理業者に依頼することもできます。詳しくは「実家の片付け、自分でやる?業者に頼む?」もあわせてご覧ください。
一度にすべてを変えようとしない
長年かけて積み重なった習慣は、一度の会話ですぐに変わるものではありません。「今日はこの引き出しだけ」というように、小さな成功体験を積み重ねていく方が、結果的にうまくいくことが多いです。焦らず、時間をかけて向き合う心構えが大切です。
よくある質問
Q. 「ためこみ症」かどうか、家族が判断してもいいのですか?
A. 素人判断で決めつけることはおすすめしません。気になる場合は、地域包括支援センターや医療機関など、専門の窓口に相談することをおすすめします。
Q. 親に何度言っても片付けてくれません。
A. 直接的な説得より、第三者の話として伝える、写真で客観視してもらうといった間接的なアプローチが効果的な場合があります。
Q. どうしても自分では対応しきれません。
A. 無理をせず、地域包括支援センターや、専門の片付け業者・遺品整理業者に相談することも選択肢の一つです。



コメント